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Channel: ゴロゴロお昼寝しています
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奏 21

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ひとつ前のお話はこちら
 
 
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「あっ、姉ちゃん… 携帯、充電がきれてたみたいだったし、充電しておいたぜ。」
「全く… 普通、携帯をソファーのクッションの下敷きになんてするか~。」
テーブルの隅っこにおいた携帯に視線を向けながら、
くくくっと笑いながら、チェジュンはテーブルにイチゴを置いた。
 
 
「・・・・・・。」
チェジュンにはわからないんだろうなぁ… この乙女心は・・
「ありがと・・」 
チラリと視線をチェジュンへと向けた後、チェギョンは携帯を手にとった。
 
昨日、何度かイ先輩から電話があった。
『ひとりになりたいんだ――』
そう言って、私を遠ざけたくせに…
まだなにか言いたりないの?
 
怖くて、出る気にはなれなかった。
何度か流れた長い着信音
 
そして今度は、メールの着信を知らせる短い着信音が鳴る。
恐る恐る開いてみたメール
 
『無事に着いたか?』
 
それって・・ 上司としての気配りですか?
 
 
その後も何度か同じようなメールが入ってきていた。
上辺だけの心配なら要らないのに…
私は返事を打つことなく、携帯の電源を切って、クッションの下にそれを滑り込ませた。
電源を切ったんだから、もう着信音が鳴ることも、バイブレーターで震えることもないのに…
それにしても…
 
素敵な人だったな――
偶然出会った、先輩の元カノ
 
そのままクッションに頭を預け、寝入ってしまった。
そして… 
翌朝、風邪を引いたらしく熱を出してしまったのだった。
 
 
 
携帯の電源を入れる。
さすがに着信もメールも拒否し続けたからか
その後、イ先輩の名前は着信記録にはなかった。
 
「ねぇ、チェジュン…
 お姉ちゃん、会社、辞めちゃおうかな・・」
 
 
「はぁっ?
 何、言ってんの・・・ この不景気な時代に。」
「姉ちゃん、熱が出て、頭おかしくなっちゃったのか?」
 
 
「・・・・・・。」
 
 
「なに会社でドジったのか知らないけどさ… 
 能天気なところが姉ちゃんのいいところだろ。」
 
 
「あんたねぇ・・それ、慰めてるつもり?」
 
 
「別に――」
「でもさ、仕事やめちゃったら、やばくない?
 父さん、速攻で地元に帰ってこいって言うぜ。」
「だって、実際、姉ちゃんが街で働くって言ったときも、
 父さんは地元でいい男でも見つけろって言ってたぐらいだし――。」
 
 
「そうね…。」
その頃の父の表情が目に浮かぶ
 
でも・・それも悪くないかも…
そう思ってしまうのは、熱のせいなのか…
 
 
 
「ほら、イチゴでも食べてさ、元気出せよ♪」
チェジュンはイチゴをひとつ、自身の口の中に放り込む。
「う~ん、甘い♪ これってさ、結構、いい値段したんじゃね?」
そう言うとひとつ手にとりチェギョンに差し出す。
 
 
確かに・・
色艶といい、形といい・・
チェギョンもひと口、齧ってみる。
「ほんとだぁ―― すっごく甘い♥」
 
 
「だろ… この季節にしては最高だよな♪」
 
「うん… さすがチャンさんだわ!」
 
「さっきのヌナの使いの人、チャンさんって言うの?」
 
「うん、チャンさんはガンヒョンの彼氏でイタリアンレストランのオーナーなの。」
 
「へぇ~、だからか…。 さすがだな。」
次から次へとイチゴに手を伸ばし、口に入れるチェジュン。
 
 
「ちょっと、チェジュン!
 それ、私のお見舞いにってガンヒョンが託けてくれたものでしょ
 なのに、なんであんたばっかり―――。」
 
 
「ばぁーか、そんなに元気なのに見舞いなんているかよ。」
最後の一個を口の中に放り込み、満足げに微笑んだチェジュン。
「んじゃ、俺はシャワー借りるから。」
そういうとチェジュンはバスルームへと逃げた。
 
 
「ひっどぉーい! 明日、絶対、ガンヒョンに言いつけてやるんだからっ!」
チェギョンは唇を尖らせた後、クスリと小さく笑う。
こんな日に一人じゃなくて良かったと…
 
 
 
 
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熱の下がったチェギョンは翌朝、普通に出勤していた。
エレベーターホールでエレベーターが降りてくるのを待っていたら
ふいに声をかけられた。
 
 
「もういいのか?」
 
 
聞き覚えのある低い声・・ イ先輩だ。
振り返らなくてもわかる。
「えぇ…。もう大丈夫です。」
 
 
「そうか。」
「コホン・・そう言えば、昨日、若い男が上半身裸でおまえの家に・・。」
軽く咳払いをし、シンは思い切ってチェギョンに聞いてみる。
グダグダとはっきりしないことを考えるのは性にあわない
 
 
「―――。」
きっと、チャンさんね…
昨日のチェジュンの事、面白おかしくイ先輩に言ったんだわ。
「えぇ、私が熱を出したって知って、様子をみに来てくれたんです。」
 
 
「様子・・を…?」 
上半身裸でか?
否定はしないんだな・・
まぁ、当り前か… 実際、俺はそいつに逢っているのだから――
 
 
「えぇ… それに、昨日は心配だし泊まっていくって。」
 
 
「泊まったのか――。」
 
 
「えぇ、泊まりました。」
 
 
「そうか――。」
 
だから、あの日の事はなかったことなのか?
付き合っている男はいない
あれはウソだったのか…
 
俺はとことん恋愛には向かない男なんだな
 
手に入れたい…
そう思ったら、するりとかわされてしまう
 
 
 
 
「イ先輩・・  乗らないんですか?」
 
 
「あぁ…。」
ぼぉっとしているうちに、どうやらエレベーターが止まっていたらしい。
 
 
 
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